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2004年12月01日

少年とエロ本

 NHKで絶賛放送中の「真剣10代しゃべり場」。始まったばかりの頃は、若気の至り溢れかえりまくりのあまりに暑苦し過ぎる内容に毎回度肝を抜かれながら夢中になって観ていた。最近ではさすがにあんまり観なくなったけど、たまーに観ると相も変わらずアッツアツの童貞とカチンコチンの処女たちによる机上の空論バトルが繰り広げられていて、やっぱり「うわぁぁぁ…」と、いたたまれない気分になってしまうのだ。

 …まあ、ボクも中高校生だった頃には「子供にだってプライバシーがある!」とか「こんな薄汚い世界は燃えてしまえばいいんだッ!」…なーんていう、しゃべり場の五倍増くらいノイローゼ丸出しなハズカシ過ぎまくる思想を声高らかに主張してたりしたので、しゃべり場でアッツくなっちゃってるボーイズンガールズのことも、批判する気は毛頭ない。ただ、NHKって全ての番組をアーカイブとして保管してあって、ライブラリーに行くと昔の番組でも見られるらしいので、今はテレビに出て気持ちよーく論客を気取ってるヤツらが、何年か経って青春ノイローゼも治まってきた頃に何かのきっかけで「本当の友達って何?」「男女間の友情は成立するのか」「大人は汚い」「信じていれば夢は必ず叶う」なんて、ホントにどーでもいい事についてアッツアツに大激論している自分の姿を見ちゃったら…死にたい気分満点になっちゃうこと請け合いだと思うんだけど…彼らはその辺ちゃんと折り合いついてるのかなぁ?

 さて、そんな感じで、日々両親や学校の先生の理不尽な物言いに憤りを覚え「こんな汚い大人になんかなりたくないッ!」とか言ってる童貞中高生たち、しかし同時に下半身の方は、思いっ切り汚い大人の世界であるところの「エロ」に支配されている時期でもある。そんな思春期特有のアンバランスさが少年たちを悩ませ続けるのだ。

 ボクもご多分に漏れず、外ではとんでもないきれい事を言いながら、家に帰ると、学習机の中に、引き出しがちゃんと閉まらなくなるくらいに大量のエロス本を隠し持っていて、日々波の如く押し寄せるエロ・リビドーに突き動かされるまま、エロ本を貪り読み、おチンチンを擦りまくり…しかし絶頂に達すると同時に一気に「この世はむなしい」…とか言ってる、どーかと思う中学生だった。

 そんなある日、いつも通りのオナニーを満喫した後に、これまでにない程デカイ虚無感が襲ってきたのだ。「こんなにエロ本ばっかり読んでたら…将来ダメな大人になっちゃうよ…どうしよう…」何かよくわからないけど、ボクはエグエグと涙を流しながら引き出し中のエロ本をボストンバックに詰め込み、それを捨てる旅に出た。そうでもしないと、ホント、地獄に落ちちゃうんじゃないかというくらいの恐怖感に突き動かされていたのだ。…男にはこんな夜が年に一回くらい訪れるもんだよね。

 さて、ただエロ本を捨てるのだったら、その辺のゴミ捨て場にでも持ってけばよさそうなものだが、ボクの実家があるのは群馬の片田舎。近所つき合いの異常に濃密な田舎町では、エロ本を捨てるのにもなかなか気を遣うのだ。ヘタな所に捨てて、近所のおばちゃんにでも発見された日にゃあ「北村さんとこのヂンちゃんが、こんなイヤラシイ本を…」なんてホットなトピックスが町中に広がり、ボクの家にだけ回覧板が廻って来ないなんていう、悲惨な村八分状態にもなりかねない…。コレは最悪だ。

 …ということで、ボクが考えたエロ本捨て場は「川」。幸いウチの近くには大きな川が流れていたので、そこでエロ本を放流しちゃえば、ボクの知らない町まで流れて行ってくれるだろう。真っ暗な土手をパンパンのボストンバックを抱えながらひた走るボク。そして川に到着すると、バックから「投稿写真」「Don't」「熱写ボーイ」…と、一冊一冊とりだしては精霊流しのようにエロ本を川に流していった。

 その時、背後から声が「何やってるんだ!」振り向くと、川原に捨ててある車の中に住みついていることでウチの近所ではお馴染みだったスーパーカーおじさんが立っていた。「…川にそんなモン流しちゃダメだろうが!」…まささかホームレスから人の道を説かれようとは…。ものすごい恐怖感と、エロ本を流しているのを見つかった恥ずかしさで大混乱したボクは、走り出した。「おい! おいってば!」…おじさんが追いかけてくる。「捕まったら川に流される…」そんなわけのわからない妄想に襲われたボクは、バックの中に残っていたエロ本をおじさんに向かってちぎっては投げ、ちぎっては投げ…。とにかく走った。

 さすが体力の有り余っている中学生時代。大した物も食っていないであろうコジキなんかに捕まることもなく、なんとか家に辿り着いた。ホッとしながら家に入ると…どうしたことか、出る時には寝ていたはずの親父が起きているじゃないか。「…な、なにしてるの?」「イヤ、なんかノドが乾いてな。…それより何でお前はそんな汗びっしょりになってるんだ」「あ、イヤ…筋トレしてたから」愚にもつかない言い訳をし、怪訝そうな顔をしている親父を後に、とにかく自分の部屋に入ったボク。ホッと一息ついたところで、自分の右手にさっき投げていたエロ本がガッチリ握られていることに気付いた。…あれ、確実に親父に気付かれてたよなぁ~…。今思い出しても…死にたい。

<「RoofTop」十一月号掲載「北村ヂンのセンチメンタル★高校13年生」より>

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